理事長挨拶

公益社団法人日本母性衛生学会
理事長 正岡直樹

令和元年6月9日の定時社員総会並びに引き続き開催された理事会にて理事長に選任していただきました。令和時代の日本母性衛生学会の舵取りをお任せ頂いたということとなり、その重責に身が引き締まる思いです。

私はこれまで岩崎寛和先生、前原澄子先生、池ノ上克先生と卓越した指導力を発揮された3人の理事長のもとで総務担当として直接薫陶を受けて参りました。その間、本会が人格なき社団から中間社団法人、一般社団法人、公益社団法人として発展する過程に目の当たりにしてきました。今後、本会が更なる発展を遂げるよう私の余生をかけて尽力する所存です。

本会設立にあたって森山豊準備委員長は「妊産婦の死亡率は死産率が欧米と比較してはるかに高率のまま残されており、この分野の遅れを取り戻すのには各方面の方々の総合的な協力体制が必要で、それが本学会設立の趣旨である」と述べられました。そし定款には「すべての女性の健康を守り、母性を健全に発達させ、母性機能を円滑に遂行させるために、母性衛生に関する研究、知識の普及、関係事業の発展を図り、もって人類の福祉に寄与する。」という高邁な目的が掲げられています。この目的を達成するためには、医師のみではなく助産師、保健師、行政も含めた各方面の総合的な協力体制が必要であることを創設にあたられた森山豊先生、松本清一先生らは見事に看破されていました。我々はもう一度この設立の原点にたちかえり、母性衛生に携わる自負と矜持をもって今後もすすんでいかなければなりません。

私の責務の第一は会員数を増加させることにあると思っています。公益社団法人として社会に向けて情報を発信するにあたっては強力な後ろ盾、すなわち絶対的多数の学会員を擁していることが必須でありますとともに、このことは学会の増収にも寄与します。会員数は近年増加傾向にあるものの、最も多かった時期と比較すると1000人ほど減少しています。その原因を考察しますと、私たちは定款に謳われた目的を達成するために多職種が同じ土俵で気兼ねなく討論ができる学際的な学術団体として活動してきましたが、他に多数存在する産婦人科、助産・看護関連学会との棲み分けが困難となり、本会会員であることのメリットが不明確となっていることにあると思われます。さらに年会費の負担などから入会を躊躇したり、退会するものが増加している可能性も示唆されています。したがって現状を打開するためには本学会のIdentityを確立し、学会員であることのメリットを実感できるような環境を醸成することが喫緊の課題と考えています。そのためのブレイクスルーとして従来の分掌に加え新たに教育担当を作ります。この部署での業務として期待していることは、まずガイドライン、治療指針等の作成があります。このことは学会の存在意義を示すとともにプロパガンダにもなります。本会からは2003年に発刊した「ウィメンズヘルス事典―女性のからだとこころガイドー 日本母性衛生学会監修」以来、この種の仕事がありません。より一般向けでわかりやすく母性健康に関連する医学、看護学、保健学までに及び、女性のリプロダクティブヘルス、ライツの遂行を支援する書物の刊行を計画しています。一方、学術集会においては若手医師、助産師の興味をひくような企画を学術集会長と検討し打ち出すことも必須の業務となります。これにより学術集会参加者の増加ひいては会員数の増加が期待できます。さらに近年の専門、認定制度への対応として産婦人科医師、助産師分野のみでなく、他領域の専門制度の研修単位取得の指定学会となることを関連学会と交渉して学術集会時のプログラムに反映させることも重要な業務となります。

超少子化時代に突入した現在において、安全安心な分娩環境の研究、母親のメンタルケアを含めた育児環境の研究、子供の安らかな発達の研究など、母子保健はますますその重要度が増してきています。この点からも本学会の存在意義は揺るぎないものと信じています。

多くの皆様のご入会を歓迎いたしますとともに、会員の皆様方からの従来にも増したご支援をお願いしつつ就任の挨拶とさせていただきます。